ただなんとなく生きてます

僕が天に召される日まで、ちまちま書いてみるよ。

遠い目

こんにちは。今日もなんとなく書きます。

 

1人で行くのがこわい。

 

そんなLineをもらって動く。

 

お人よしにも程があるだろう。

 

ガンではない事がわかりホッとする。

 

 

院内でおにぎりを2人で食べた。

 

目の前を色んな人が通過する。

 

院内にもコンビニがあるのが普通になったね。

 

思い出さない様にしていた、

 

記憶の扉が開く。

 

 

夜の病室。

 

今の様な賑わいは無く、

 

ひっそりしている。

 

彼女の腕に、Apple Watchを付ける。

 

『魔法の時計だにゃ!』

 

お金を持たずとも、ご飯が買えるよ。

 

お揃いで持ったこの時計。

 

なぜか使ってくれなくて、

 

ようやく出番がきたところだった。

 

その時、立ち話をしたのが、

 

今座ってるベンチの前だなんてね。

 

 

『じゃあ、これで行くね!』と僕は話す。

 

彼女は表情が曇り『見送るね』とつぶやいた。

 

バイクにまたがる。あの黒いシルエットかな??

 

塔の様な建物の複数の窓に、人影が見える。

 

あ、あはは。やっぱりそうだ。

 

彼女は僕に手を振る。

 

手を大きく振り返し、退院を願った。

 

 

あの時、今日みたいな、こんなふうにそばにいて、

 

どんな検査も、そして結果も。

 

全部横で聞いていてあげたりできればね。

 

もっと一緒の時間を…

 

コロナ禍でそんな事は叶うはずもなく

 

まだ暖かい手と、髪を撫でて泣いた。

 

知り合いの退院や入院に付き添い

 

記憶の上書きをしていたのだが、

 

どうしてもふと思い出す。

 

彼女がこの通路を、点滴しながら歩いていた時

 

隣にいてあげたかった。

 

今こうして、流れる様に歩く、

 

元気な人達を恨めしく思った。

 

 

1人目の彼女に、してあげられなかった事が多い。

 

僕に尽くしてくれたのに申し訳ない。

 

今なら、ペーパードライバーでもないし、

 

どこだって連れて行ける。

 

洗濯だって覚えたよ。性能のいい、

 

洗濯バサミを見つけたよ。

 

時々、そんな報告がしたくなる。

 

 

いなくなってからじゃ遅いんだ。

 

罪滅ぼしじゃないけれど、

 

短気な性格を治したよ。

 

昨日動いたのは、その彼女の誕生日だったから。

 

見て。今では他人にもこんな風に接してる。

 

来世があるならば、もう一度僕を見つけてよ。

 

たくさんの人が通過する病院通路。

 

その全員がぼやけるほどの焦点で、

 

窓の外、遠くで揺れる桜を見ていた。