ただなんとなく生きてます

僕が天に召される日まで、ちまちま書いてみるよ。

情けない僕

こんばんわ。今日もただなんとなく書きます。

 

大家さんがビワを持ってきてくれた。

 

『一日常温で置いて、冷やして食べるんだよ?』

 

食べ方、皮の剥き方まで教えてくれる。

 

ほんと、優しい人に巡り会えたもんです。

 

 

ビワか…

 

僕はビワを見つめて、昔を思い出した。

 

小さい頃、家の横にある会社には、ビワが実った。

 

かなり大きな粒で、みんなに配るほどなのさ。

 

今ならわかるのだが、大きな粒にするには

 

それなりに手を加える必要がある。

 

大家さんが花を摘む姿を何度か見た。

 

あれをやると、実が大きくなるのだ。

 

毎年、いや。その年も

 

楽しみにしていた人もいただろうに…

 

 

僕はビワを見るたびに自己嫌悪に陥る。

 

この時の思い出が頭をよぎるからなんだ。

 

 

友達を集めて木に登る。

 

猿のように壁やフェンスを走る。

 

とにかく楽しい!!!

 

木の上と下に分かれて戦う事にした。

 

その時に、僕が武器にしたのが、ビワ。

 

フェンスと、木を交互にうつり、

 

ビワをむしっては、下の敵チームにぶつけた。

 

木からはビワがなくなった。

 

そこに大人が来た。

 

『ああぁ…なんてことを…』

 

 

僕は、さっとみをひるがえし、

 

近くにあったブルーシートに身を潜めた。

 

 

木の持ち主ではなく、

 

ビワを楽しみにしてた近所の人に

 

逃げきれなかった友達が怒られる声が聞こえる。

 

ふひひ。俺は逃げ切るぜ。

 

木の持ち主が怒ってないならいーじゃん!!

 

僕は、周りが静かになるまで

 

ブルーシートの中にいた。

 

 

帰宅したら、母親が悲しがっている。

 

あ… か、かぁさん…僕の事か…

 

家の隣の木なのに、僕が逃げ切れる訳がなかった。

 

木の持ち主の仕事が終わる夜に、謝りに行った。

 

『みんな謝ったのに、ただ1人謝らずに逃げた』

 

それを詫びろと周りから言われた。

 

(なんで、こんな時間に呼ばれなきゃいけないんだ??

 

親まで呼びやがって!!!)

 

僕は思った事を口にした。

 

【来年またなるから、いーじゃん。】

 

 

僕のセリフに、みんなががっかりした。

 

 

翌朝、お昼休みに先生のとこにおいでと言われた。

 

学校の先生にも僕の話が伝わった様で、

 

先生は僕の頭を撫でながら言った。

 

『先生も昔、同じ事をしたんだ。

 

お前もまさか、同じ事をするなんてな』

 

この先生が好きだっただけに悲しくなった。

 

『お前、ビワ作った事ないだろ?』

 

うん…

 

『なら、食べるだけにしないとな』

 

投げないで食べればよかったの?

 

『違うよ。お店で買って、作る人にありがとう!

 

って食べる物なんだ。お前は、それを地面に投げた』

 

うぅ…

 

『あんまり周りを悲しませるな。以上だ』

 

この先生をかなりの回数で悲しませた。

 

ひいきと言われるほどに可愛がられたのに、

 

僕は、全部悪い事で返してしまったよ。

 

 

みんなが謝っている時、

 

1人ブルーシートに隠れてやり過ごした。

 

あの時の自分が浮かんで叫びたくなる。

 

情けない僕だ。

 

 

この先生は、僕と同じ事をした後、

 

怒られるはずのおじいちゃんに、

 

こう言われたのだとか。

 

『よくやった。あいつには、いい薬になった。

 

ビワの木を庭に植えるなと言い伝えがあるんだ』

 

幼少の先生『どんな言い伝えなの?』

 

『知らないのか…

ビワの木 びわのき びょうき 病気…』

 

『ほぅら。縁起悪いだろぉ?』

 

そう言って、頭を撫でられたとか。

 

僕の頭をなでたのも、それを思い出したのだろう。

 

 

明日、ビワを冷やして食べてみるよ。