ただなんとなく生きてます

僕が天に召される日まで、ちまちま書いてみるよ。

彼女とカマキリ

こんばんわ。今日もただなんとなく書きます。

 

仕事を終えて家に帰ってきたら、

 

100均の首からかける虫かごがあった。

 

懐かしいなこれ、まだこんなの売ってたんだ。

 

小さい頃、近所のおじちゃんが

 

僕にコクワガタをくれた時、

 

この虫かごだったなぁ…

 

そんな事を思い出した。

 

中を覗く。

 

何がいんだ?

 

あ!!カマキリか…

 

 

ベランダの、小さな家庭菜園。

 

ミニトマトプランターにいたと言う。

 

ちっこいやつで、足に、蚊のような模様がある。

 

昔、僕を可愛がってくれていた人が言っていた。

 

『木の上だけで暮らすカマキリもいるんだよ』

 

こいつだ…

 

ハラビロカマキリというやつで

 

小柄なくせにガッチリした奴。

 

僕は、カマキリの中でも、こいつが好き。

 

 

誰も信じてくれないのだが、

 

僕は幼い時に、この人から

 

ピンク色のハラビロカマキリを採ってもらった。

 

ネギの花にくっついていたんだ。

 

緑に、ピンク…

 

ザクと、シャアザクみたいだ。

 

それ以来、ずっとハラビロカマキリが好きかな…

 

 

彼女は、このカマキリに餌を採ったと言う。

 

中をもっと良く覗き込むと、

 

ナナホシテントウがいた。

 

カマキリよりでけぇの。

 

カマキリも、小さいくせに、

 

近寄るてんとう虫に手を出すが、

 

ちっこいカマキリには餌になる訳がなく

 

僕は笑って、それを逃がしてあげた。

 

てんとう虫を捕まえてる彼女を思い浮かべ

 

なんだか微笑ましくなった。

 

 

カマキリを飼ってみようか?

 

いい大人になったが、

 

このカマキリを飼う事にしたんだ。

 

小さいネコみたいに、

 

ぴょんぴょん跳ねる。結構可愛い…

 

 

あの人の言葉を思い出す。

 

『緑色の蚊を食べさせてはいけないよ』

 

寄生虫を持っているそうなんだ。

 

小学6年のあの人は、誰から習ったのだろうか…

 

 

アブラムシ、黒い蚊、蛾、バッタ。

 

カマキリはどんどん大きくなる。

 

僕は彼女に、カマキリの羽を見せたかった。

 

昔、大雪の後に、ススキのヤブをかき分けたら

 

カマキリが力尽きていた。

 

羽を孔雀みたいに広げて、

 

死に様まで美しい…

 

きっと、こいつの羽も、あのくらい美しいだろう…

 

 

残念なことが起きた。

 

最後の脱皮の時に、

 

餌のオンブバッタと一緒にしていたのだが、

 

そのバッタが、カマキリの羽を食べてしまったのだ。

 

僕が見せたかった羽を見せれなかった。

 

だけど、ボロボロの羽のカマキリを、

 

彼女はかなり可愛がっていた。

 

 

笑われてしまうかもしれないが、

 

カマキリも人に懐くんだよ。

 

いつも首を持ってご飯をもらってたからか、

 

彼女が首を持つとご飯が来るのを理解してた。

 

 

僕の失敗は、

 

このカマキリを逃すタイミングを無くした事。

 

あんまりにも彼女が可愛がってるから、

 

野に放つ事ができなかった。

 

秋になると、このカマキリは無精卵を産んだ。

 

ただ、人に飼われて終わってしまう。

 

申し訳なく思った。

 

だけど、彼女が色んな物を食べさせるから

 

冬を越してしまったんだ。

 

僕よりも飼育に長けた達人だと感心した。

 

 

牛乳、刺身、桃、カツオ節。

 

オロナミンC、ホットケーキ、干しエビ。

 

人に飼われたからこその食べ物。

 

夏まで生きてしまうんじゃないか??

 

そう思った時に、彼女が入院してしまった。

 

僕が連れて行った海で、怪我をしてしまったんだ。

 

小学生が履くような上履きで、

 

岩場を歩かせてしまった事で転んでしまった。

 

『お連れの人、ものすごい怪我をしています』

 

釣り人に言われて慌てて戻った。

 

手に大きな怪我をしていた。

 

『手術なしでは、もう元にはもどらない』と、

 

医者に言われた。

 

治療費を稼ぎたくて

 

僕は働き通しになった。

 

母親代わりの彼女を引き離した事で、

 

カマキリは餓死してしまい、

 

退院してきた彼女を二重に悲しませた。

 

 

もう僕には、カマキリを飼う資格はないと、

 

カマキリを見てもそっと見守るだけにしている。