ただなんとなく生きてます

僕が天に召される日まで、ちまちま書いてみるよ。

孫のような存在

こんばんわ。今日も、もうひとつ書いていきますね。

 

20歳前だったかな。無職になった。

 

暇でする事がなくて、公園でタバコを吸っていた。

 

 

似合わない場所にいるのはなぜかというと、

 

虫のお墓を作りにきたんだ。

 

飼っていた虫がいなくなったと思ったら、

 

なぜか、僕のブーツの中の爪先部分にいて

 

知らずに履いてしまった事で

 

命を奪ってしまったんだ。

 

可哀想に…

 

 

そんな時です。

 

買い物帰りと思える、高齢者が

 

公園の階段で転んでしまった。

 

この2人は夫婦なのか、奥さんみたいな人が

 

オロオロしちゃっていたんだ。

 

当時、スウィーティと呼ばれていた果物が、

 

ゴロンゴロンと飛び出してしまった。

 

それよりも心配なのは、

 

旦那さんが、頭部より出血しちゃった事。

 

あわてて近寄り、首に巻いていたタオルを渡す。

 

奥さんが止血に回る間、僕は果物を拾い、

 

カゴ付きの台車に戻してあげた。

 

 

おじいさん、大丈夫ですかっ!!!

 

僕は近寄る。

 

おじいさんはうめきながら

 

『起き…上がりたい…』と言った。

 

僕は、力はある方だと思っていたが、

 

起こそうとすると人間の身体は、

 

やたら、しなるんだ。起こすのが大変だった。

 

転んだ人なんか知らんぷりすればよかったのに…

 

そんな考えも浮かんだが、

 

それが出来ないと思える出来事が過去にあったんだ。

 

 

高校の帰り道。

 

家のそばの細道だった。

 

白いエプロンをつけたおばあちゃんとすれ違った。

 

その時、おばあちゃんがいきなり、

 

『かはっ!!かはっ!!』って、

 

苦しそうにしてた。

 

ん!?って思って近寄ろうとしたら、

 

ピンク色の血を吐いているんだ。

 

白いエプロンが、みるみるピンク色に染まる。

 

血液ということもあり、

 

僕は何も出来なかった。そこから立ち去るしかなく、

 

ずっと後悔として、記憶に刻まれた。

 

あの人は、あの後、助かったのだろうか…と。

 

 

この2人を助けたら、2人が言った。

 

『お礼をしたい。近いので家に来て欲しい』と。

 

断ればいいのに、厚かましい僕はついていく。

 

途中、奥さんの方までヨロヨロした。

 

旦那の出血に驚いた事もあったんだろう。

 

 

家に着いた。なかなかいいおうち。

 

飛び石が続き、またもや2人がヨロヨロする。

 

風雲たけし城の、龍神池が頭に浮かんだ。

 

お礼は、僕に食事をして欲しいという事。

 

無職で、空腹。やったぜ!!1食ういた。

 

 

2人から自己紹介を受けた。

 

春藏(はるぞう)さんと、一香(いちか)さん。

 

2人とも、品のいい人で、

 

見るからに優しそうな人でした。

 

2人がお礼に食事を作ると言う。

 

おじいさんは、庭に行き、

 

おばあさんは、流しに立った。

 

何が出てくるんだろう…てか、

 

本当に、僕は厚かましい。でも無職。暇なの。

 

 

春藏さんの料理は、

 

アロエベラの刺身。

 

生まれて初めて食ったよ。わさび醤油で食べるの。

 

一香さんの料理は、

 

アボカドのわさび醤油。刻み海苔が乗ってる。

 

当時の僕は、この二つの料理を食べた事がなくて

 

本当に感動した。

 

アロエなんか、やけどに使うってことしか知らないし

 

アボカドは、昔、スーパーで、僕の母親が買ったら、

 

ガチガチに固い食べ物だった。

 

 

互いに感謝を伝えあい、僕は帰路についた。

 

帰宅するなり、僕は冷蔵庫を開け、

 

家にあった友達のみやげ物。茨城県の納豆を持ち、

 

再度この家を訪問した。

 

そこから、この2人との交流が始まりました。

 

暇でする事がないと、この2人に会いに行く。

 

 

中学2年で大好きだった祖母を亡くし、

 

生まれた時から祖父がいなかった僕には、

 

この2人が、第3のおじいちゃん、おばあちゃん。

 

そんな感じになりました。

 

柿をむいてくれたり、鮎の燻製をくれたり。

 

孫のように可愛がられた。

 

中でも楽しかったのは、植木。

 

2人とも、やたら植木にくわしくて

 

僕によく植物を見せてくれました。

 

今でも名前が言える。

 

ガマ。ゲンノショウコ。シラユキゲシ。

 

 

出会いが遅すぎた事もあり、

 

春藏さんが逝ってしまう。

 

1人寂しく、一香さんが言っていた。

 

『白いたんぽぽ育ててみたいなぁ…』

 

僕は、もうこの頃には勤めだしていたのだが、

 

野原を見つけると、白いたんぽぽを探した。

 

見つかる事はなかったんだけどね…

 

 

仕事の帰り道、

 

一香さんの家に救急車が停まっていた。

 

赤いライトは家の壁まで照らして、

 

まるで火事のように見えた。

 

家族でもない僕には、一香さんがどうなったのか

 

知る事はありませんでした。

 

 

最近、アロエベラを取引先からもらい、

 

事務所に置いています。

 

ふと、気になって、

 

白いたんぽぽ  と検索してみた。

 

楽天にヒットして、なんと、種が売っていた。

 

あの時、こんなふうに買えたのならば、

 

2人に見せてあげれただろうなって思った。