ただなんとなく生きてます

僕が天に召される日まで、ちまちま書いてみるよ。

夏のヒーロー

こんばんわ。

 

僕は幼稚園の時に弱視と診断された。

 

片側だけなんだけどね。

 

遠視で、右目が見えなくなった。

 

いい方の左目をつむると、

 

部屋の明るさが変わるほど悪かった。

 

母親は、やつめうなぎ と呼ばれる

 

変な干物を取り寄せたり

 

僕の回復に奔走してくれた。

 

 

アイパッチと呼ばれる変な治療を受けた。

 

片目を塞いだまま生活するのさ。

 

当時、幼稚園でメガネをかけてるのは僕しかいなくて

 

レンズはビンゾコメガネと呼ばれるほど分厚い。

 

両目がやたら大きくなるレンズで

 

メガネザル!って呼ばれたよ。

 

目医者から言われたのは

 

きみは、このメガネとずっと一緒にいないといけない

 

命の次に大事にするんだよ   と。

 

幼稚園って、残酷なやつが多くて

 

メガネを貸して!って

 

鷲掴みでメガネを奪うんだ。

 

フレームは曲がり、レンズはよく取れた。

 

命の次に大事。そうはならなかった。

 

僕に蹴りを入れて逃げる遊びを思いついた奴がいて

 

そいつに繰り返しそれをやられた。

 

まぁ、後でやり返すんだけどね。

 

 

小学校に上がる。

 

地域の子供達と遊ぶと

 

メガネの一年ポックリは、みそっかす!と、

 

何をやるにも、のけもの。

 

学校では、幼稚園からの仲良しだらけだったが

 

地域では辛辣な嫌がらせを受けた。

 

そんな時にそばにいてくれるのが

 

4歳歳の離れた兄貴。そして、その友達。

 

どっちも強烈な強さ。

 

特に兄の横にいつもいる人。

 

この人は別格だったよ。

 

僕のほっぺたをBB弾で撃った奴は

 

ピクピクするほど殴られた。

 

以来、何をするにもそばにいてくれて

 

一年生から二年生まで

 

超濃密な時間を過ごせたんだ。

 

 

ただ、気がかりがあった。

 

やる事がとにかく悪い。

 

小学一年生の目から見ても

 

これは犯罪だ!って事ばかりした。

 

おかげで、心許せる一部の友達も

 

あの人と遊ぶ人とは遊べない…って

 

距離を置かれたこともあったよ。

 

 

この人は、最高に悪い人でしたが、

 

強くて優しかった。

 

いろんな遊びを創ってくれて

 

虫が好きだと話すと、

 

それを、さらに引き延ばしてくれる。

 

いろんな虫を採ったよ。

 

飼い方、名前、どこにいるか。

 

全部この人から習った。

 

図鑑でしか見たことのない虫が

 

僕の手の中にいる。

 

タマムシを兄貴と持った時や

 

ウスバカゲロウを捕まえた時。

 

タイコウチを洗面器で育てた時。

 

ゲンゴロウに刺身をあげた時とか、

 

ヨツボシケシスイをクワガタと一緒に飼ったり。

 

あげたらキリがない。

 

ただ、うっかり言ってしまって後悔したのが

 

ミヤマクワガタが欲しいと言ったこと。

 

このクワガタは不思議なやつで

 

ある地域から先にしかいない。

 

僕の街にはいないのさ。

 

この人は、ミヤマクワガタあげるよ!

 

と、人から奪った。

 

 

奪う襲うを、呼吸の様にこなす人で

 

兄貴のそばにいつもいる。

 

鍵っ子だった事もあり

 

兄貴のそばを唯一の居場所としていたのかな。

 

火薬や刃物に興味を示し、

 

サバイバルナイフを映画以外で初めて見た。

 

缶詰めを、いとも簡単に貫通する切れ味で

 

ちょっとした戦慄を覚えたよ。

 

夏休みになると、ほぼ毎日一緒にいて

 

この人も弟を連れてくる。

 

僕によく懐いて、4人でいつも一緒にいた。

 

 

度が過ぎる悪事を繰り返すので

 

近隣からの嫌われ方は凄まじかった。

 

だけど、僕にとっても兄みたいな存在。

 

夏祭りで、ガムの混じったアイスを買ってくれたり

 

別れ際には、いつもとうもろこしを4人で食べた。

 

今でもとうもろこしが大好きだよ。

 

無言で一粒づつ食べていく。

 

まるで恵方巻きの様だ。

 

 

時々、思った。

 

この人は未来から来たのではないか?と。

 

僕に、夜は星を見る様に勧め、

 

野原で虫を探して採る事を強調した。

 

これは、目医者も推奨し、

 

やがて奇跡を起こした。

 

みんながメガネをかけ始め出す中学で

 

僕は裸眼での生活になった。

 

メガネを外せる日が来たんだ。

 

親の奔走が一番ではありますが、彼の力は大きい。

 

 

 

小学生から原付を乗り

 

車上荒らしでお金を得る。

 

後に、バイクばかり乗り

 

今で言う旧車をたくさん触った。

 

XJ RZ HAWK2…

 

何台持ってたんだろう…

 

高校生になった頃、

 

ヤンキー漫画で彼のバイクが出ると

 

懐かしい気分に浸ったものです。

 

 

僕の目に見ても生き急いだ。

 

そんな感じの彼は

 

16歳で命を落とす。

 

うそだろ!?って思った。

 

得意とするバイクで死んだのだ。

 

信じられなくて家まで行った

 

長い分が玄関のドアに貼ってあって

 

みたことのない2文字

 

『他界』 しました。と、書いてあった。

 

大人たちは

 

バカが、やっと死んだ。 と喜んだ。

 

人気がなかった様に見えて

 

彼の事故現場は、落書きと花の数がすごく

 

今でもあれほど花があった事故現場は見た事がない。

 

 

他県に行った時、彼が書いた落書きを見た。

 

中学生が夜中にこんなとこまで来て

 

こんな落書きを残したのかと思うと

 

なんか彼らしくて笑えた。

 

僕は、原付、単車、車と、

 

免許を取るたびに彼の事故現場に報告に行った。

 

就職が決まり、この町から離れる時も報告した。

 

最近、この事故現場をスマホで撮り

 

ロック画面にしてる。

 

寂しがり屋な一面もあったから…

 

ある話を聞かされた。

 

忘れ去られる事で

 

もう一度死ぬと言う。

 

それはない。僕が覚えてる。

 

優しい人だとよく言われるが

 

彼を思い浮かべてそうしてるんだ。