ただなんとなく生きてます

僕が天に召される日まで、ちまちま書いてみるよ。

虹色の工具

こんにちは!今日もただなんとなく書きます。

 

それは9月だった。あやしい季節だった。

 

職場で、永遠と思われる3人の班に、

 

かげりが訪れた。

 

 

研磨班の人が言う。

 

『前の職場でフォークリフト乗ってたって

 

言ってたよね?しばらくうちの班に

 

来てくれないかな??』

 

僕は、免許がなかったから

 

もう今は乗りたくないと話した。

 

『違ぇんだよ。普通のフォークなら、

 

俺らもやるんだわ。見てくれよ!あれ!』

 

クランプというのかな。

 

クワガタみたいに挟むフォークなの。

 

あれで、カーボンで出来た物を掴んで欲しいと言う。

 

カーボンは、頑丈だけど、衝撃に弱かった。

 

【行ってやれよ。2人でなんとかなるわ】

 

上司がそういうので、渋々引き受けた。

 

7月からの好景気で、この班は忙しく

 

全く戻れる気配がなかった。

 

 

この班も楽しくて、すぐに打ち解けた。

 

フォークリフトに乗らない時は、

 

サンドブラストという、

 

粒子で物の表面を削る仕事を手伝った。

 

みんなが言う。

 

『なんか、お前のマスク、カッコいいな!』

 

へへっ。特別に買ってもらった防塵マスクだぃ。

 

 

時々、フォークリフトで、2人の前を通過する。

 

ちまちま、ネジ穴を強化したりしてる。

 

あの仕事に戻りたいなぁ…なんて思ったりね。

 

後輩は、わざと通路で転んだりして

 

僕の道をよく塞いだ。

 

(先輩、いつ戻るんスか!?長げぇスよ)

 

(結構寂しいんスけど)

 

あはは。いなくなってありがたみを知れ!!

 

2人を追いかけるように蛇行して手を振った。

 

この部署は、休憩する部屋も違うからだね…

 

確かに寂しいや…

 

 

さらに忙しくなってきた。

 

僕は夜勤になる。大きな荷物は

 

人のいる昼間よりも、

 

夜に運ぶ方が都合がいいから…

 

 

ますます2人と顔を合わせなくなった。

 

そんな時です。

 

(先輩!誕生日おめでとう)

 

ん!?なんだー!?

 

僕の勤務の夜間帯に、後輩がまだいた。

 

2人になったせいで忙しいと聞いていた。

 

ありがとー!何コレ?

 

誕生日なんかすっかり忘れてた。

 

そか、今日は9月25日か…老けたな。

 

僕は袋を開けた。

 

六角レンチという工具で

 

それぞれに色が付いていた。

 

見た目にも可愛くて、こいつの選びそうな色。

 

(レインボーレンチって言うらしいスよ)

 

(でね、先輩に報告!俺、車買ったんスよ!)

 

おおお!すげぇじゃん!!

 

(10月1日納車っス。)

 

おおー!すげぇね!!

 

(先輩、チャーハンの美味い店、見つけたんスよ)

 

(俺の車で行きましょうよ!)

 

うんうん!いいねー!いこいこ!

 

(マジ車乗りてえっス。バイク寒みぃス)

 

ねー!俺も毎晩バイクさみぃ!!

 

ホント、死んでしまいそうだわ!!

 

(ぎゃはは!!)

 

僕の頭に、こいつの誕生日には

 

真四角のやつ。iPod nanoをあげようと思った。

 

車につけて、トランスミッターで聞くのいいよね。

 

 

仕事を切り上げて上がる後輩を見送る。

 

3回も振り返り手を振ってくる。

 

あはは!めんどくさ!!早く帰れ!!!

 

 

5日後…

 

出勤して、いつものように

 

入荷所のおじちゃんと会話した。

 

おはようございまーす!さみぃですね!

 

『なんかよ…』

 

はい?

 

『日勤のやつが、オートバイで死んだらしいぞ』

 

え…

 

色んな事が頭の中で駆け巡る。

 

(10月1日納車っス)

 

明日じゃないか…